詰将棋のルールを解説の第二回「詰将棋の世界」 (数学セミナー2017年5月号掲載)

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数学セミナーという、数学関係の月刊の雑誌で、詰将棋の連載が始まったことを、前に記事にしました。
連載名は「詰将棋の世界」で、将棋ファンならとてもワクワクさせられるタイトルですね!
以前の記事では、数学セミナー2017年4月号に載った、記念すべき連載第一回のことを書きました。
実は、すでに第三回が掲載された数学セミナー2017年6月号が出ているのですが、今更ながら、5月号掲載の第二回について記事にします^^

 

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目次

 

「詰将棋の世界」連載第二回は初回出題の問題の解説からスタート

 

詰将棋についてのイントロダクションや歴史的が主な内容だった初回。
私個人としては、数学雑誌上での詰将棋連載とのことで、今後どのように展開されていくのか、全く想像がつかないので、第二回を読むのが楽しみでした。
(その割には雑誌を購入するのが遅くなりましたけど^^)

 

第二回の連載は、まずは前回出題されていた詰将棋の問題の解答・解説から始まります。
初回を読まれた方にはおわかりのとおり、見開き2ページの連載の右ページの一番下の段に、詰将棋の問題が2問載せられていました。
前回出題の問題とは、もちろんそれらのことです。

 

詳しくは以下に述べますが、こういう解説をきっちりとしてくれる親切さに、改めて連載「詰将棋の世界」への好印象を持ちました。

 

初回出題の二問をスペースを割いて丁寧に解説

 

前回出題の詰将に対する解説部分が、どのくらい親切であるかというと、次のような感じです。

  • 問題の図面も再掲載なので、前回の雑誌が手元になくてもOK
  • 見開き2ページの連載のうち、左ページの約3分の2を使用
  • 正解手順以外の詰みや失敗する変化についても説明がある

 

これがどれくらい丁寧でありがたいことであるかは、将棋好きな人ならきっと共感いただけますよね(笑)。

図面の再掲載については、将棋の雑誌「将棋世界」の懸賞問題などでもやっていることなので、普通といえば普通ですが、やはり便利です^^
そして、解説がとても丁寧です。

 

 

解説ではまずはじめに、出題図における状況把握から入ります。
具体的には、第一手でこうすると失敗する、ということも解説されていて、正解手の必然性がわかるようになっています。

 

攻め方(詰ます方)だけでなく、玉方(詰まされる方)の対応についても、各候補手について、こうすると攻め方の持ち駒が余るから、こちらが正解です、という風に、正解手順を選ぶ必然性がわかるように説明されています。

 

今ちょっと書いた「持ち駒余り」などのルールについては、後で書きますので、疑問に思った方は、もう少々お待ちください。

 

詰将棋において、問題の初期配置における状況の把握は大切です。
特に、試しに平凡な手を考えることは局面を理解する上でとても大切で、本質的なことだと思います。
しかもこのことは詰将棋だけでなく、普通の将棋にもいえることだと思います。
通常こうしたことは、人から教わると早く覚えられるのですが、身近に教えてくれる人がいない場合もあるかも知れません。

新聞に載っている詰将棋の解説や、将棋雑誌の詰将棋の解説の場合、将棋がある程度以上強い人向けの解説になっていることも多く、
初心者には出題の状況や正解手順がなぜ正解であるのか、他の手順ではどうしてだめなのかが理解できない場合も結構あります。
また、出題図と正解・解説が少し離れた場所にあることもあるので、図面と解説の間をいったりきたりするはめになったりとかもあります(笑)。

強い人だと、図面が完全に頭に入っているので大丈夫なのですが、上達のために詰将棋をやろうという人の場合は、そういう苦労があります。

 

「詰将棋の世界」の解説は、3手詰めという短い手数の問題の解説だからということもありますが、丁寧さにおいては、将棋の雑誌や書籍を超えているといってもよいかも知れません。
詰将棋初心者の方は、この連載を利用して勉強してみるのもありだと思いますが、いかがでしょうか?

 

合駒・あき王手といった将棋用語や、持ち駒余り・無駄合などの詰め将棋固有のルールも解説に登場

 

さて、丁寧な詰手順解説に好感が持てる「詰将棋の世界」ですが、まったくの詰将棋初心者には少しだけハードルがあります。
そのあたりのことを少しだけ書かせてください。

 

まず、当然ですが、詰将棋を理解するには、将棋の基本ルール・駒の動かし方は、「成り」や「二歩」なども含めて理解しておく必要があります。

 

それ以外で連載を読む上で知っておきたいいくつかの専門用語を挙げておきます。
連載第二回の解説にさりげなく登場している用語です。

 

まず、「合駒」という用語について。
これは、別に知らなくても将棋を指す上では特に困りませんが、詰将棋をやるためには、やはり必須のようですね。

 

将棋には、自分の一つとなりまで動ける、専門的にいうと一つとなりまで効きがある駒はたくさんありますね。
そのうち、歩・金・銀・王(玉)は、一つとなりまでしか動けません。

それに対して、俗に「飛び道具」とか呼ばれる駒も存在します。
例えば、香。
香は自分の前であれば、間に障害物さえなければ、いくらでも前に、いっぺんに進める駒でしたね。

 

この香で王手をかけられたときに、対処する方法は2通りあります。

 

一つは、避ける手、つまり王を右か左に動かす手です。
もう一つの方法は、相手の香と自分の王の間に、自分の駒を置くこと。
細かくいうと、盤上にいた駒を動かすのと、持ち駒を打つのと、2つ方法があります。
このうち、持ち駒を打つことを、「合駒」を打つと呼びます。
プロ将棋の解説や感想戦などだと、「合駒が悪いので詰んでしまう」という言葉がよく出てくることがあります。

 

香だけでなく、飛・角それに龍や馬に対しても同様に、「合駒」という用語は使われます。

 

さて、「合駒」をおわかりいただけたら、次は「あき王手」も理解しておきましょう^^

 

ある意味では、「あき王手」は、「合駒」の逆みたいなものです。
「飛び道具」の効いている線の上に、障害物があれば王手が止まるわけですが、これとは逆の状況を考えましょう。
例えば自分の香の前に相手の王がいるけれど、間に自分の角が1枚いるとします。
当然、この状況では自分の香は相手の王に効いていないので、王手はかかっていません。
さて今、自分の手番だったとしましょう。
香と王の間の角を、どこか別のところに動かしてみましょう。
すると、どうでしょう?
仮に相手がパスをして自分の手番がきたとすると、香で相手の王をとることができてしまいます。
つまりどういうことかというと、先ほど角を動かした手は、「王手」だったわけです。

 

こういう、飛び道具の効くラインから自分の駒をどけて王手がかかることを、「あき王手」と呼びます。

 

さて、ずいぶん説明が長くなってしまいましたが、詰将棋特有の「持ち駒余り」「無駄合」の概念についても書きましょう^^

 

 

詰将棋は、非常におおざっぱにいうと、最短の手順で玉方を詰ます問題です。
詰んだときに、攻め方の持ち駒が余る手順と余らない手順があってしかもどちらも同手数だったとすると、持ち駒が余らない方が正解とされます。

もっというと、詰将棋では、詰め上がりで持ち駒が余ってはいけません。

これが詰将棋の「持ち駒余り」禁止のルールです。

 

 

一方、玉方がどんな合駒をしても、攻方がそれをとってしまえば必ず詰む、という状況があった場合、最終的に詰んだ状態では持ち駒が余ってしまいます。
これは、「持ち駒余り」があるときは、正解にならないのだとすると、少々困った状況に思えます。
実は詰将棋では、そういう、手数を無意味にのばすだけの合駒は、「無駄合」と呼ばれます。
玉方が無駄合を打つ以外に抵抗する手段がなくなった時点で、「詰め上がり」とみなされます。

 

「詰将棋の世界」連載第二回の内容は、詰将棋のルールの数学的(?)な定義

 

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さて、今回は自分でも意外なくらい、長文記事を執筆してきました^^

 

第三回も記事にしなければならないので、早めに切り上げますが、第二回の本文の内容についても簡単に触れてみたいと思います。

 

第一回の連載では、詰将棋とはどんなものであるかを簡単な例を挙げて説明されたのですが、第二回以降では、より詳細な詰将棋のルールの解説がなされていきます。

 

詰将棋のルールが説明されている、と書きましたが、より詳しくいうと、詰将棋の定義が書かれている、という感じです。
つまり、「詰将棋とは何であるか」についての、はっきりした説明がなされています。

 

この「定義」という言葉を初めて学校で教わるのは、たぶん高校の数学の授業だと思いますが、「数学セミナー」の執筆陣やメインの読者層が興味を持っている、大学での数学では、高校数学以上に「定義」が大切です。
なので、さすがは数学の雑誌だな、という印象です^^

 

学問としての数学においては、定義の他に重要なものはたくさんあります。
例えば「論理」です。
論理とはようするに筋道の通った理屈のことで、曖昧さがないという特徴があります。

 

実は、詰将棋に対するこれまでの私の理解は結構感覚的で、あまり論理的に理解していませんでした。
最近、「将棋世界」に掲載された詰将棋を解いていて、自分が正解だと思った手順と違う手順が正解として示されていました。
私が正解だと思った手順と、答えとして載っていた手順とで、手数は同じだし、どちらも「持ち駒余り」がないので、自分では、どちらも正解だと思っていました。
なので、「どうして片方の正解しか書かれてないのかな?」などと思っておりました(笑)。

 

第二回の「詰将棋の世界」の連載を読んでいて、詰将棋における「正解」とは何かが今までよりもクリアにわかり、自分が正解と思っていた方はどうやら、詰将棋としての「正解」ではなかったのだということが納得できました。
第三回連載以降の内容とも関わってくるのですが、原則的に、詰将棋においては、正解は一つに(せっかくなので数学風の言い回しを使うと、一意に)、定まるようになっているのです。

 

そういう感じで、論理的な定義を読んだおかげで、詰将棋のルールが今までよりも明確に理解できた気がします^^
定義とか論理とか、数学的(?)とかの言葉から、なんだか難しそう、と心配になった方もいるかもしれませんが、安心してください。
数式などは出てきませんし、詰将棋の定義の部分も、(多少数学調ではあっても)普通の言葉で書かれていますので、読むことができると思います。
逆に、数学が得意でも油断しない方がいいでしょう^^
定義といっても多少の曖昧さはありますし、国語力や将棋自体の知識の方が理解する上で大切になってきます。

 

私個人としての感想としては、明確な定義のおかげで詰将棋のルールが理解でき、自分の理解の浅かったところを補うことができて、得した気分になれた、といった感じです。

 

まとめ

 

いかがでしたか?
今回は、数学セミナー上の連載「詰将棋の世界」の第二回について書いてみました。
私としては、連載の補足的な用語説明なども書くことができ、満足なのですが、読者の皆さまにも楽しんでいただけていたら幸いです。

 

第三回連載もおすすめですので、興味を持った方は、店頭や通販などでの購入をご検討なさってはいかがでしょう?

 

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